墓じまい後の遺骨はどこに移す?供養先の選択肢を比較

墓じまいは、お墓を撤去して終わりではありません。取り出した遺骨をどこに移すかを決めなければ、そもそも手続きが始められない。改葬許可を申請する時点で、移転先を証明する書類が必要になるからです。

つまり、行き先を決めることが墓じまいの最初の関門になります。

そして実際、ここで止まる家庭は多いと思います。費用も、お参りのしやすさも、家族の気持ちも、それぞれ別の方向を向いているからです。

この記事では、遺骨の移転先としてどんな選択肢があるのか、何を基準に比べればいいのかを整理します。

目次

選ぶときの4つの軸

先に、比較の軸を挙げておきます。金額だけで決めると後悔しやすい部分なので、この4つで見てください。

軸①:費用

永代供養は一柱いくらという料金体系が基本です。遺骨が複数ある場合、ここが総額を大きく左右します。

軸②:取り出せるかどうか

これが最も見落とされやすい軸です。合祀してしまうと、後から特定の遺骨だけを取り出すことはできません。一度決めたら変更できないという性質は、費用よりも重い判断材料になります。

軸③:お参りに行けるか

遠方の墓を閉じるのに、また遠い場所に移してしまっては意味がありません。誰が、どのくらいの頻度で行くのかを考えて場所を選ぶ必要があります。

軸④:親族が納得するか

費用が安くても、家族の誰かが強く抵抗する形式では話が進みません。特に散骨や合祀は、世代によって受け取り方が大きく違います。

主な選択肢

大きく分けると六つあります。名前は聞いたことがあっても、中身が意外と違うので、ひとつずつ見ていきます。

永代供養墓(合祀型)

他の方の遺骨と一緒に納める形式です。管理は寺院や霊園が続けてくれるので、承継者がいない場合の受け皿になります。

費用は最も抑えられます。ただし、一度合祀すると遺骨を取り出すことはできません。 遺骨は骨壺から出され、他の方と一緒に納められます。

遺骨が何柱もある場合、すべてを合祀にすれば費用は大きく下がります。一方で、後から気が変わっても戻せない。ここを家族全員が理解したうえで決める必要があります。

永代供養墓(集合型・個別型)

共通の施設内に個別のスペースを持つ形式が集合型、家族単位の専用スペースを設けるのが個別型です。

費用は合祀より高くなりますが、一定期間は個別に安置されるため、すぐに取り出せなくなるわけではありません。

ただし多くの場合、契約期間が過ぎると合祀に移されます。 期間は施設によって異なるので、契約前に必ず確認してください。

「永代供養だから永久に個別で管理される」と誤解しやすい部分です。永代というのは寺院や霊園が続く限りという意味で、個別安置が永久という意味ではありません。

樹木葬

墓石の代わりに樹木や草花を墓標とする形式です。近年選ばれることが増えています。

こちらも合祀型・集合型・個別型に分かれており、タイプによって費用も、取り出せるかどうかも変わります。

「樹木葬」という言葉だけで内容が決まるわけではないので、どのタイプなのかを確認することが重要です。

自然に還るイメージから、比較的受け入れられやすい形式でもあります。

うちの親も、自宅近くの樹木葬をすでに購入しています。

納骨堂

屋内の施設に遺骨を安置する形式です。ロッカー型、仏壇型、自動搬送型など、施設によって形態はさまざま。

屋内なので天候に左右されず、駅から近い立地のものも多い。高齢の家族がお参りする場合や、車を使わない人にとっては現実的な選択肢になります。掃除や草取りも不要です。

こちらも契約期間があり、期間後は合祀となるものが一般的です。

海洋散骨

遺骨を粉末状にして海に撒く方法です。お墓を持たないという選択になります。

遺族が乗船して行う個別散骨、複数の家族が同乗する合同散骨、業者に任せる委託散骨があり、費用は形式によって変わります。

注意点が二つ。遺骨は粉骨する必要があり、これに別途費用がかかります。 そして散骨してしまえば、当然ながら取り戻すことはできません。

また、親族の理解を得にくい形式でもあります。

お参りする対象がなくなることに抵抗を感じる人は少なくありません。全部を散骨するのではなく、一部を手元供養として残すという選択をする家庭もあります。

なお、粉骨だけを単体で依頼することもできます。散骨するかどうかを決めていない段階でも、合祀墓や樹木葬で粉骨が必要になる場合があるため、費用の目安を知っておくと計画が立てやすくなります。

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粉骨から海洋散骨まで対応しており、乗船して行う形式と、業者に任せる代行形式が選べます。散骨を検討している場合も、粉骨だけ必要な場合も相談できます。資料請求は無料です。

手元供養

小さな骨壺やペンダントなどで、遺骨を自宅に置く方法です。

すべての遺骨を手元供養にするというより、他の方法と組み合わせて使われることが多い形式です。合祀や散骨を選ぶ際、一部だけ手元に残すことで、気持ちの整理がつきやすくなる場合があります。

ただし、手元供養にした遺骨をどうするかという問題は、次の世代に引き継がれます。自分の代で完結しない点は意識しておいたほうがいいと思います。

遠方に住んでいる場合に考えたいこと

実家が遠くて墓じまいを検討している場合、移転先を実家の近くにするか、自分の住まいの近くにするかという選択が発生します。

自分の近くに移す場合

お参りに行きやすくなるのが最大の利点です。ただし、遺骨を運ぶ必要があります。柱数が多いと、骨壺は想像以上に重く、かさばります。また、実家に残る親族がお参りできなくなるという問題も出ます。

実家の近くに移す場合

現地の親族がこれまでどおりお参りできます。手続きも現地で完結しやすい。ただし、自分の代でお参りに行く機会は、結局ほとんどないかもしれません。

どちらにも行かない選択

散骨や合祀を選べば、お参りに行く場所という概念自体がなくなります。これを寂しいと感じるか、区切りがついたと感じるかは、人によって違います。

墓じまいをする理由が「遠くて通えないから」であるなら、移転先を選ぶときも同じ問いに戻ることになります。

誰が、この先お参りに行くのか。

その答えが「おそらく誰も行かない」であれば、行きやすさを優先する意味は薄くなります。

遺骨ごとに違う扱いをすることもできる

すべての遺骨を同じ場所に移さなければならない決まりはありません。

たとえば、直接の記憶がある祖父母は個別安置にして、それより前の世代は合祀にする。両親の分だけ手元に残し、他は樹木葬に移す。

こうした組み合わせは実際に行われています。

遺骨が複数ある場合、この方法は費用面でも効果があります。

ただし、誰をどう扱うかという線引きは、後から蒸し返されやすい部分でもあります。必ず家族で話し合って決めてください。

決められないときは、順番を変える

行き先が決まらないと墓じまいが始められない、という構造で止まっている家庭は多いと思います。

そのときに考えたいのが、全部を一度に決めようとしないことです。

墓を閉じることと、最終的な供養先を決めることは、必ずしも同時である必要はありません。

一時的に納骨堂に預けて、その間に家族で話し合うという進め方もあります。手元供養という形で一旦引き取ることもできます。

急いで決めた合祀は取り消せません。決められないなら、決められる形まで持っていくほうが安全です。

我が家の場合

うちは、二つのお墓それぞれで事情が違います。母方の墓には遺骨が何柱も納められていて、正確な数すら把握できていません。父方は、原爆の影響でほとんど遺骨が納められていない状態です。

母方については、すべてを個別に永代供養すると費用が相当な額になるため、古い世代は合祀にして直近だけ別の形に、という方向になりそうです。ただ、それを誰がどう決めるのかは、まだ手つかずです。

そして、話が具体的に進まない一番の理由は、いま関わっている親族自身が、将来どこに入るのかを決めていないことです。墓じまいをするなら、その先も一緒に考えることになる。生きているうちに自分の埋葬先を決められる人ばかりではありません。

行き先を決めるというのは、過去の遺骨の話だけではなく、自分たちの話でもある。そこが、この判断を難しくしているのだと思います。

遺骨の移転先は、費用だけで決められるものではありません。取り出せるかどうか、誰がお参りに行くのか、家族が納得できるか。この三つを費用と並べて考えると、選択肢は自然に絞られてきます。

決められないまま止まっているとしても、それは判断が遅いのではなく、慎重に考えているということだと思います。取り消せない決定である以上、時間をかける価値はあります。

なお、各形式の費用や契約内容は、地域や施設によって大きく異なります。検討する際は複数の施設から資料を取り寄せ、契約期間と合祀の時期を必ず確認してください。

墓じまいと移転先の手配をまとめて扱う事業者であれば、撤去から供養先までを一度に相談できます。

どの形式にするか決まっていない段階でも、それぞれの費用感を並べて聞けるので、家族で話し合う前の材料集めには向いています。

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この記事を書いた人

東京在住。両親の実家がそれぞれ九州と中国地方にあり、二か所のお墓をどうするかという問題に、いま家族として直面しています。専門家ではなく、当事者としてゼロから調べ、家族と話し合いながら進めている過程を記録しています。制度や手続きについては公的機関の情報を確認したうえで掲載していますが、詳細は必ずお住まいの自治体でご確認ください。

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