実家の墓が遠い人の墓じまい|現地に親族がいるうちに動くべき理由

実家は地方、自分は東京や大阪。お墓は実家の近くにあって、最後にお参りしたのが何年前だったか思い出せない。人によっては、正確な場所すら把握していないかもしれません。

この状況で墓じまいを考えるとき、多くの人が最初に調べるのは費用や手順です。ただ、遠方に住んでいる場合はその前に押さえておきたい論点がひとつあります。

誰が、いつ手続きをするのかという問題です。

墓じまいの工程には、現地に行かないと進まないものがいくつも含まれています。

実家に親や親戚が住んでいるうちであれば、その人たちに動いてもらえる。けれど全員がいなくなってから着手すると、同じ手続きを遠方から、しかも何度も足を運びながら進めることになります。

この記事では、墓じまいの工程を「現地でしかできないこと」という切り口で分解して、遠方在住の人が何を負担することになるのかを整理します。

目次

墓じまいの手続きは、想像より「現地」に縛られている

墓じまい(改葬)は、役所に一枚申請すれば終わる手続きではありません。おおまかには次の順番で進みます。

  1. 遺骨の移転先を決めて、受入証明書などを発行してもらう
  2. 現在の墓地の管理者(寺・霊園)から埋葬証明書を発行してもらう
  3. 墓のある市区町村役場に改葬許可を申請し、改葬許可証を受け取る
  4. 閉眼供養を行い、遺骨を取り出す
  5. 墓石を撤去し、区画を更地にして返還する
  6. 移転先に改葬許可証を提出して納骨する

このうち、移転先の手配(1と6)は自分の住んでいる地域で完結します。問題は2から5で、これがほぼすべて墓のある場所を軸に動くという点です。

前提として、手続きの細部は自治体ごとに違う

ここから先を読む前に、必ず押さえておいてほしいことがあります。墓じまいに必要な書類も、その名称も、申請の方法も、自治体によってかなり違います。

改葬の手続きは墓地埋葬法という法律に根拠がありますが、実際の運用は各市区町村に任されています。そのため、こうした違いが生じます。

  • 書類の名称が違う。埋葬証明書、納骨証明書、収蔵証明書と、呼び方は自治体によってまちまちです。改葬許可申請書の中に証明欄が組み込まれていて、独立した書類が不要なところもあります。
  • 必要な書類の数が違う。申請書だけで済むところもあれば、受入証明書や墓地使用者の承諾書、身分証の写しまで求められるところもあります。
  • 申請書の枚数が違う。遺骨一体につき一枚必要な自治体もあれば、一枚にまとめて記入できる自治体もあります。代々続いた墓の場合、ここは負担に直結します。
  • 申請できる人が違う。墓地使用者本人に限る自治体もあれば、委任状があれば代理人でも可というところもあります。遠方在住者にとってはここが分かれ目になります。
  • 郵送に対応しているかどうかが違う。窓口のみのところ、郵送可のところ、電子申請を導入しているところが混在しています。
  • 手数料が違う。無料の自治体もあれば、一件あたり数百円かかるところもあります。

つまり、この記事を含めて、墓じまいの手続きを解説した記事はあくまで一般的な流れの説明にすぎません。

実際に動くときは、必ず墓のある市区町村の公式サイトで様式と要件を確認するか、担当課に直接問い合わせてください。

窓口は「市民課」「戸籍住民課」「生活衛生課」など自治体によって異なりますが、代表番号に「改葬許可の件で」と伝えれば案内してもらえます。

以下では一般的なケースを前提に説明しますが、あなたの実家の自治体では違う可能性がある、という前提で読み進めてください。

埋葬証明書は、墓地の管理者にしか出せない

改葬許可を申請するには、その墓に確かに遺骨が納められていることを、墓地の管理者に証明してもらう必要があります。寺なら住職、霊園なら管理事務所です。

寺なら住職、霊園なら管理事務所になります。

書式は自治体が用意した改葬許可申請書の一部になっていることが多く、そこに管理者の署名と押印をもらう形になります。

郵送でやり取りできるかどうかは相手次第で、寺の場合は「一度ご挨拶に来てほしい」と言われることも珍しくありません。

そもそも寺の墓であれば、この署名をもらう場面が実質的な離檀の申し出になります。長く付き合ってきた檀家関係を終わらせる話を、電話一本で済ませられるかというと、現実的には難しい。

ここは現地に行く前提で考えておいたほうがいい工程です。

改葬許可を出すのは、墓のある自治体

ここを勘違いしている人が多いのですが、改葬許可を出すのは自分が住んでいる市区町村ではありません。

現在お墓がある場所の市区町村です。

実家の近くに墓があるなら、その自治体の役所で申請することになります。

前の節で書いたとおり、申請の要件はここが最も自治体差の出るところです。郵送可か窓口のみか、代理申請を認めるか、手数料がいくらかは、その自治体に確認しないと分かりません。

そして遠方在住者にとって影響が大きいのが、遺骨一体につき一枚の申請を求める自治体があるという点です。

代々続いた墓で何柱も納められている場合、申請書が数枚から十枚以上になることもある。そうなると、それぞれについて誰の遺骨なのか、いつ埋葬されたのかを埋めていく作業が発生します。

古い遺骨だと戸籍を辿らないと分からないケースもあり、ここで一気に時間を取られます。

逆に、まとめて一枚で申請できる自治体であれば、この負担はほとんどありません。同じ墓じまいでも、墓がどこにあるかで手間がまったく変わってくるわけです。

閉眼供養と遺骨の取り出しは、立ち会いが前提

墓石から魂を抜く閉眼供養(魂抜き)は、寺の墓であれば住職に読経してもらうのが一般的です。日程は寺の都合に合わせることになるので、こちらが自由に決められるわけではありません。

供養が済んだら、カロートを開けて遺骨を取り出します。この作業自体は石材店が行いますが、遺骨を引き取るのは施主側です。

何十年も納められていた骨壺は、地域によっては水が溜まっていたり、状態が良くないことがある。その場でどうするかを判断する場面が出てくるので、誰かが立ち会う必要があります。

撤去と返還にも、確認の場面がある

墓石の撤去と更地化は業者の仕事なので、任せてしまえば済みます。

ただし、着工前の現地打ち合わせ、完了後の確認、そして寺や霊園への区画返還の手続きが残る。

この一連を遠方から進めると、写真のやり取りだけでは判断しきれない場面が出てきます。

遠方在住だと、何往復することになるか

上の工程を、東京から地方の墓へ通うと仮定して並べ直してみます。

  • 1回目:寺・霊園への申し出、離檀の相談、墓の現況確認、石材店への見積もり依頼
  • 2回目:埋葬証明書の受け取り、役所での改葬許可申請
  • 3回目:閉眼供養への立ち会い、遺骨の引き取り
  • 4回目:撤去完了の確認、区画の返還手続き

実際には工程をまとめられる部分があるので、うまく調整すれば2回から3回に圧縮できます。それでも、片道が飛行機や新幹線になる距離だと、交通費と宿泊費、そして有給休暇が確実に消えていく。

この負担は、墓じまいの費用相場の記事にはまず載っていません。

対して、実家に親や親戚が住んでいる場合はどうなるか。寺への挨拶も、役所への申請も、供養の立ち会いも、その人が動けば移動時間はゼロです。

遠方にいる側は、費用の負担と意思決定に加わるだけで済みます。同じ墓じまいでも、負担の総量がまったく違ってきます。

全員がいなくなってから着手すると、何が起きるか

「そのうち考えればいい」と先送りしたまま、現地の親族がいなくなった場合はどうなるのか。移動の負担が増えるだけでは済みません。

名義人が分からなくなる

墓地の使用権には名義人がいて、手続きは基本的にその人か承継者が行います。名義人が亡くなったまま承継の届出をしていないと、まず名義を整理するところから始めることになる。承継者を証明するために戸籍を集める作業が発生します。

寺との関係がゼロから

墓地の使用権には名義人がいて、手続きは基本的にその人か承継者が行います。名義人が亡くなったまま承継の届出をしていないと、まず名義を整理するところから始めることになる。承継者を証明するために戸籍を集める作業が発生します。

誰が入っているのか分からない

改葬許可申請では、埋葬されている人の氏名や埋葬時期を記入します。事情を知る世代がいなくなると、これを調べるところから始めなければなりません。

管理費の滞納が積み上がる

放置している間も年間管理料は発生し続けます。長期間滞納すると無縁墓として扱われ、最終的に合祀されて遺骨を取り出せなくなるケースもあります。

つまり、先送りには利息がついてくる。手続きの難易度そのものが上がっていきます。

筆者の場合

我が家も、まさにこの構図の途中にいます。

両親はそれぞれ九州と中国地方の出身ですが、私や両親は東京に在住。つまり関係するお墓が二つあって、どちらも東京からは遠い。そして両家とも、家という観点で言えば継ぐ人がいない状態です。母方はきょうだいが姉妹だけ、父方の叔父には娘しかいない。

話が動き出したきっかけは、はっきりしています。墓の管理を当たり前のようにやってきた祖父母の世代がいなくなったことです。

それまでは誰も考える必要がなかった。掃除も、管理料の支払いも、寺との付き合いも、全部その世代が黙って処理してくれていたわけです。

ここで整理しておきたいのが、墓じまいの当事者は世代によってズレるということです。

墓じまいの話題では「子が親に切り出しにくい」という言い方をよく見かけます。ただ、この場合の親とは墓を実際に管理してきた人を指します。我が家に当てはめれば、その親にあたるのは祖父母であって、子にあたるのは私ではなく私の親の世代です。

つまり、管理していた世代がいなくなった時点で、次の世代が自動的に当事者になる。私はさらにその下にいるので、費用や方針の決定には加わっても、手続きの主体ではありません。

自分が今どの位置にいるのかを把握しておかないと、話が進まない理由も、誰と話をつけるべきかも見えてきません。

うちの場合、言い出したのは親の世代でした。すでに自宅近くの樹木葬を購入していて、遠方の墓に入るつもりはないと明言しています。

正直に書いておくと、私はもう20年近く墓参りをしていません。同じ状態の人はかなり多いと思います。

その上で、我が家がどう進めようとしているかというと、現地にいる母の姉と父の弟が主体となって手続きをするという形です。東京から二か所の墓じまいを同時に回すのは、時間的にも費用的にも現実的ではない。

ただ、話が具体的に進んでいるかというと、そうでもありません。理由ははっきりしていて、墓じまいをするなら、その二人自身が将来どこに入るのかも同時に決めなければならないからです。

生きているうちに自分の埋葬先を決められる人ばかりではない。ここで止まっているのが現状です。

もうひとつ残っているのが、母方の墓には祖父の親の代まで遺骨が納められているという問題です。

何柱もの遺骨をすべて個別に永代供養すると費用が跳ね上がるため、古いものは合祀にして直近だけ個別にする、といった判断が必要になります。この話は費用に直結するので、別の記事で詳しく扱います。

代行サービスという選択肢もある

ここまで読んで、遠方だと現実的に無理だと感じた方もいると思います。そういう場合は、墓じまいの代行サービスという手があります。

書類の準備から墓石の撤去、遺骨の移転先の手配まで。現地に何往復もする前提だった工程を、かなりの部分まとめて任せられます。

ただし全部ではありません。とくに離檀の申し出、つまり寺との関係を終える話は、第三者が入るとかえってこじれるので、事業者が避けていることが多い。ここは自分たちで話す前提と考えておいてください。

料金の決まり方も事業者によってバラバラです。お墓の面積で決まる全国統一料金のところもあれば、現場を見て見積もるところもある。塀や階段、灯籠といった付属物が追加になるかどうかも違います。

もちろん頼めば費用はかかるので、自分で動ける人には割高です。逆に、遠方から何度も通う交通費と休暇を考えれば安く済むこともある。要は、どこに住んでいて、家族に動ける人がいるかどうか。

まずは金額の幅を知るところからでいいと思います。資料請求や見積もりは無料のところが多いので、目安が分かるだけでも家族で話す材料になる。契約はまだ先の話です。

【ミキワの墓じまい】

全国統一料金で、墓石の撤去から改葬先の手配までをまとめて対応しています。お墓の面積で料金が決まる仕組みなので、遠方でも金額の見当をつけやすいのが特徴です。資料請求と相談は無料です。

遠方に住んでいる人が、いま現実的にできること

すぐに墓じまいを実行しないとしても、手を打っておける段階はあります。

墓の所在と契約状態を確認しておく

どこの寺・霊園か、名義人は誰か、管理料はいくらで誰が払っているか。この三つが分かるだけでも、いざ動くときのスタート地点がまったく違います。現地の親族に聞けば済む話なので、いま聞いておく価値は大きい。

誰が納められているかを、聞ける人がいるうちに聞く

改葬許可申請で必ず必要になる情報です。記録が残っていない古い遺骨ほど、知っている人がいなくなると調べようがなくなります。

寺との関係を把握しておく

檀家かどうか、これまでどんな付き合いをしてきたか。離檀の話を切り出すとき、この背景を知っているかどうかで進め方が変わります。

墓のある自治体の様式を、先に見ておく

多くの自治体は改葬許可申請書をサイトで公開しています。何を書く欄があるのか、遺骨ごとに一枚必要なのか、郵送や代理申請が可能なのかを事前に把握しておくと、必要な情報を集める順番が決まります。ここは遠方にいても今日できる作業です。

現地の親族と、負担の分担を話しておく

手続きを誰が担い、費用を誰が出すのか。この二つは分けて考えたほうがいい。遠方の側が動けない分を費用負担で引き受ける、という形に落ち着くケースもあります。

そして何より、現地に動ける親族がいるうちに切り出すこと。先送りするほど選択肢が減っていくタイプの問題なので、まだ全員が元気なうちに話題に出しておくだけでも意味があります。

墓じまいは、費用の問題として語られることが多いテーマです。ただ遠方に実家がある場合は、そこに移動と時間、そして「誰が動けるか」という制約が重なります。

手順を調べるより先に、家族の中で誰が現地に行けるのかを確認しておく。それが遠方在住者にとっての実質的な第一歩になります。

この記事を書いた人

東京在住。両親の実家がそれぞれ九州と中国地方にあり、二か所のお墓をどうするかという問題に、いま家族として直面しています。専門家ではなく、当事者としてゼロから調べ、家族と話し合いながら進めている過程を記録しています。制度や手続きについては公的機関の情報を確認したうえで掲載していますが、詳細は必ずお住まいの自治体でご確認ください。

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